「高齢で妊娠できる確率を知りたい!」
「そもそも高齢の定義って?何歳まで妊娠できる?30代後半だけど妊娠できるの?」
「20代後半だけど、何歳まで妊娠できるの?」
「高齢の妊娠は流産する確率などリスクが高いのは知っているけれど、どんなリスクがどれぐらいあるの?」
など、気になっている女性も多くいるのではないでしょうか?
様々な疑問の背景には、「高齢で妊娠したい(妊娠した)けれど、流産などのリスクが心配」「今は若いが、いつまでリスクが低く妊娠できるのか、将来のリスクが心配」という状況におかれている、もしくはおかれる可能性が高いと感じている女性が増えていることを示します。
実際に、女性の晩婚化に伴い、女性の出産年齢も高齢化し、厚生労働省によると、第一子の出生時の母の平均年齢は、1990年では27.0歳だったのが、2019年には30.7歳まで、3.7歳上昇しています。また、母の年齢別出生率の年次推移は、25~29歳が最も高くなっていましたが、2005年に30~34歳が最も高くなり、35歳以上でも上昇傾向となっています。(※1)
一般的には35歳以上での初めての妊娠が、高齢妊娠と呼ばれます。前述のとおり、初産年齢は年々あがっているため高齢妊娠は珍しくありません。しかし、体の仕組みとしては、35歳をすぎると母体・胎児へのリスクが急激に上がるのです。
そこで、ここでは
- 高齢妊娠の確率
- 高齢妊娠で起こり得る5つのリスク
(1)母体のへ3つのリスク
(2)赤ちゃんへの2つのリスク - 高齢妊娠の確率を上げ、リスクを減らすためにできること
をご紹介します。
(※1)1周期当たりの妊娠率 厚生労働省1-01.pdf (mhlw.go.jp)
目次
高齢(35歳以上)で妊娠する確率は約1~18%
年齢とともに妊娠確率は低くなります。自然妊娠の場合、その確率は35歳で18%、40歳で5%、45歳で1%です。(※2)
不妊治療(体外受精)の場合、35~37歳で約30%、38~39%で約20%、40歳以上で約15%以下となり、自然妊娠よりもその確率は上昇します。(※3)
ちなみに30歳以下では、自然妊娠は25~30%、不妊治療(体外受精)は約45%となっており、どの年齢でも体外受精での妊娠率は高くなっています。
(※2)1ヶ月の間に自然妊娠する確率
- 25歳:25%~30%
- 30歳:25%~30%
- 35歳:18%
- 40歳:5%
- 45歳:1%
(※婦人科ラボ「実は思っているほど高くない「自然に妊娠できる確率」」よりデータ引用)
(※3)卵子を融解後に、良好な受精卵が確保できた場合の妊娠率 (日本産科婦人科学会データより)
- 30歳以下 ・・・45%程度
- 31~34歳・・・35%程度
- 35~37歳・・・30%程度
- 38~39歳・・・20%程度
- 40歳以上 ・・・15%以下
(※自社HP FAQより内容抜粋(https://gracebank.my.site.com/s/article/number-of-egg-freezing))
高齢妊娠・出産の5つのリスク
母体への3つのリスク
35歳をすぎると妊娠確率が低下するだけでなく、母体へのリスクが急激に上がります。
一般的には45歳を過ぎると、母体・胎児へのリスクを考慮して、不妊治療も諦めた方が良いとされています。高齢妊娠に伴う母体への影響として、以下の3つのリスクがあります。
妊娠高血圧症候群などの合併症リスク
高血圧、糖尿病、子宮筋腫などの妊娠合併症の発症率が高くなります。特に妊娠高血圧症候群の発症頻度については、45歳以上で高くなるという報告が多いのです。
妊娠高血圧症候群とはどういうものなのでしょう。それは、妊娠時に収縮期血圧が140mmHg以上(重症では160 mmHg以上)、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上(重症では110 mmHg以上)になった場合、高血圧が発症したといいます。重症化すると、脳出血、肝機能障害、腎機能障害など様々な合併症を引き起こすといわれています。さらに、母体だけでなく胎児にも影響し、胎児の発育が悪くなったり、胎児に酸素が届かなくなったり、流産の危険性も高まります。(※4)
同様に、妊娠糖尿病も合併症のリスクの高いものの一つです。妊娠糖尿病は妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常のことで、「75gOGTT」と呼ばれる検査で妊娠中の血糖値が以下3つのうち1つでも満たした場合には、妊娠糖尿病と診断されます。
- 空腹時血糖値 ≧ 92mg/dl
- 1時間値 ≧ 180mg/dl
- 2時間値 ≧ 153mg/dl
妊娠糖尿病になると、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症・腎症およびそれらの悪化などの合併症を引き起こし、胎児は流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大などの合併症を引き起こしてしまいます。(※5)
妊娠高血圧症候群も妊娠糖尿病も、母体と胎児共に危険な状態となることがあるので、注意が必要です。
(※4)妊娠高血圧症候群|公益社団法人 日本産科婦人科学会 (jsog.or.jp)
(※5)糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告 (国際標準化対応版) (jst.go.jp)
妊娠中や出産時の異常リスク
妊娠中の異常リスクとしてあげられる代表的なものが、以下の3つです。
胎位異常(逆子など):正常な状態は胎児が頭を母体の下にした状態ですが、これ以外の場合を胎位異常といいます。いわゆる逆子がその代表的なもので、頭が上を向き、足やお尻が子宮口を向いている状態です。胎位異常は基本的に経腟分娩ではなく帝王切開となります。
前置胎盤:胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着してしまい、そのために胎盤が子宮の出口(内子宮口)の一部/全部を覆っている状態のこと。経腟分娩は難しいので帝王切開になります。さらに分娩時の出血が多くなるリスクがあります。
常位胎盤早期剥離:胎盤が子宮の壁からはがれて赤ちゃんに酸素が届かなくなること。胎児機能不全のリスクが高まります。
(※6)胎向と胎位の異常 – 22. 女性の健康上の問題 – MSDマニュアル家庭版 (msdmanuals.com)
妊娠中だけでなく、出産時にも異常リスクは伴います。分娩誘発の頻度、遷延分娩や分娩停止が増加するなど、難産になりやすい傾向があります。また、加齢に伴う産道の硬化、子宮筋収縮力低下による微弱陣痛などのリスクもあります。これらのリスクは、肥満や子宮筋腫・腺筋症の合併症が増えることも影響していると考えられています。さらに、妊産婦の死亡率も加齢に伴い高くなると言われ、高齢出産は様々なリスクと隣り合わせなのです。
帝王切開率の増加リスク
初産婦での帝王切開率は30~40歳では28%、40~44歳では43%、45歳以上では54%まで上昇します。これは、早産、多胎、胎位異常、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、高血圧、糖尿病、子宮筋腫などの妊娠合併症が多いこと、難産になる確率が高いことが原因と考えられます。
高齢妊娠・出産の胎児への2つのリスク
流産・早産・死産の増加
流産率が最少となるのは22歳前後の8.7%であり、これに比べ48歳以上では84.1%と約10倍にもなります。また、異所性妊娠、胞状奇胎も母体年齢とともに発生頻度が増加しています。さらに、加齢に伴う子宮機能低下、染色体異常の発生率・妊娠高血圧症候群や子宮筋腫などの合併症増加により、子宮内胎児発育不全や早産が起こりやすく、低出生体重児も高齢妊娠に多いのです。
(※参考 秋田県産婦人科学会・医会)
染色体異常の増加
全染色体異常をもつ子供が生まれる確率は、35歳で約0.005%、40歳で約0.015%、45歳で約0.05%と年齢と共に上昇します。また、染色体異常は流産のリスクも高く、高齢出産になるほど流産・染色体異常のリスクは高まります。
高齢妊娠のリスクを減らすためにできること
高齢妊娠の確率低下や、胎児へのリスク(流産・染色体異常など)増加は、加齢による卵子の質低下によるところが大きいと言われています。若く妊孕性(にんようせい:妊娠できる力のこと)が高いうちに、卵子を凍結保存することで、妊娠確率をキープ&胎児へのリスクを少しでも減らせる可能性があります。
Grace Bankでは国内最高峰の厳選された不妊治療クリニックを全国に組織化しているので、転勤や引っ越しの際でも凍結卵子をどの提携クリニックでもご利用いただけます。また、耐震性に優れた国内最大級の規模の凍結保管設備を持ち、23年間無事故を誇る安心の保管システムのステムセル研究所と提携し、万全な保管体制を整えています。
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まとめ
若いうちに卵子を凍結保存しておけば、高齢でも妊娠の確率を上げ、流産や加齢による胎児へのリスクを少しでも減らせる可能性があります。しかし、卵子の時を止めても、母体年齢を止めることはできず、高齢妊娠の母体へのリスクは変わることはありません。
40歳と42歳では、妊娠・出産確率が大きく変わるという報告もあります。35歳以上で妊娠を希望する場合は、1年でも早い方が母体・胎児ともに安心です。
▼この記事の監修は…
医師紹介:岡田 有香(おかだ ゆか) 産婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医、グレイス杉山クリニックSHIBUYA院長 順天堂大学医学部卒/聖路加国際病院8年勤務 現在まで産科、婦人科全ての領域に携わる。不妊治療を行う中で、不妊予防に興味を持ち、自身のInstagram(@dr.yuka_okada)でも生理痛や不妊、妊活の知識を発信している。 資格:da Vinci certified First Assistant (ダビンチ認定資格取得術者) 、日本母体救命システム普及協議会J-CIMELSプロバイダー 所属学会:日本産婦人科学会、日本生殖医学会、日本女性医学会、日本産科婦人科内視鏡学会、NPO法人日本内膜症啓発会議 |
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