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そもそも労働基準法が定める「生理休暇」とは?現状は?
労働基準法第68条によると「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」(引用元:労働基準法|e-Gov法令検索)とあります。この条文は、女性が備える、妊娠・出産を可能とする生理的機能(母性機能)を保護するために定められたといえます。たとえ会社の就業規則に生理休暇の規定がなくとも、労働基準法で定められた制度であるため、生理日で就業が著しく困難な女性から請求された場合には、企業は付与する必要があります。付与せずに就労させた場合は、30万円以下の罰金刑を受けるおそれもあります。
法律で定められているにもかかわらず、現状としては、女性労働者のうち、生理休暇を請求した者の割合は 0.9%です。(出典元:厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査『事業所調査 結果概要』」)
働く女性 2,000人を対象におこなったアンケートによると、PMS・生理痛などの女性特有の症状で、業務生産性が下がると答えた人は約半数(参考:日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査 2018」)にものぼることから、企業の「生理休暇」の導入が切迫して求められているといえます。
「生理休暇」導入時、企業が気をつけるべき6つのポイント
「生理休暇」の有給・無給は企業が決めることができる
生理休暇を有給休暇にするか、無給休暇にするかは企業が判断できます。実態は、生理休暇を設けている企業のうち、無給休暇としているのが67.3%、有給休暇としているのは29.0%です。(出典元:厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査『事業所調査 結果概要』」)
「生理休暇」の取得日数は制限できない
「生理日の就業が著しく困難」な状態は、人によって程度も日数も違うことから、労働基準法でも取得日数上限は定められておらず、企業が「月〇日まで」など取得日数を制限することはできません。ただし生理休暇のうち「〇日までは有給、〇日目以降は無給」という規定は可能です。
「生理休暇」の取得は雇用形態で制限できない
「生理休暇」の取得条件は「就業が著しく困難な女性」であり、雇用形態・勤続年数・年齢などによる制限はありません。したがって、正社員だけではなく、非正規・パートアルバイトも対象となります。
「生理休暇」は時間単位で取得できる
1日単位だけではなく、半日や〇時間など、時間単位でも取得できます。
「生理休暇」は診断書なしで取得できる
「生理日の就業が著しく困難」という取得条件についての証明として、診断書提出までは不要とされています。
「生理休暇」の不正取得は懲戒処分の対象にできる
「生理休暇」は、取得日数制限ができず、診断書提出も不要なため、不正取得に対するルール規定も必要となっていきます。過去には、生理休暇中に遠隔地へ長時間かけて旅行し、翌日の民謡大会に出席したことが生理休暇の不正取得とされ、休職3ヵ月を限度とする処分が妥当とされた判例もあります。(出典元:全国労働基準関係団体連合会「岩手県交通事件」)
「生理休暇」を円滑に運用する4つのコツ
全社に周知徹底・理解を促進する
生理休暇が、特別なこととして認識されるのではなく、女性の体の自然な営みの上に由来することであると、会社全体の認識が高まることが必要です。女性の体の仕組み、特に生理痛・貧血・子宮内膜症などの病気など、生理にまつわる不調について理解を促進する社内セミナーや勉強会の開催などが有効です。
上司経由以外でも申請できるようにする
休暇申請の相手が男性であると、言いにくいことも多々あります。連絡方法が、直接の会話でなくても済むように、スムーズな申請システムを構築するのがスマートかもしれません。
「生理休暇」の名称を変更する
ダイレクトな言い方に抵抗を感じる方もいるかと思います。「ウェルネス休暇」、「ライフサポート休暇」、「メディカル休暇」などソフトな表現方法が見つかるとよいですね。
PMS(月経前症候群)でも取得できるようにする
PMS(Premenstrual Syndrome=月経前症候群)とは、排卵から生理までの期間に心身の不調が生じる病気で、女性の60%にPMS症状があるとされています。放置すると、精神症状が重くあらわれるPMDD(月経前不快気分障害)という精神疾患に移行する場合もあります。人によっては症状が重いことがあり、生理同様「就業が著しく困難な場合」が生じていると言えます。確かに、PMSは労働基準法が定める「生理日」ではないため、生理休暇付与の義務はありませんが、生理同様「就業が著しく困難な場合」に該当すると言えますので、自宅でゆっくり過ごせるよう生理休暇の対象として検討する余地があると言えます。
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