ドクターインタビュー

【前編】両角レディースクリニック 両角和人院長|「会計士になって」という父を説得して選んだ道

6組に1組が不妊治療を受けると言われる日本。

妊活や不妊治療の現場の医師たちは、どんな想いを持って最前線に立っているのでしょうか。

普段は語られることがない、ドクターのパーソナルストーリー、第三話(前編、中編後編)は、両角レディースクリニックの両角和人(もろずみ・かずと)院長です。

父親に反対された末に医師の道を選び、今では魂を入れた治療を行うことをモットーにする両角医師。

高い技術を追い求めることはあたり前。技術とともに、患者にどう寄り添えるのかこそが重要──。両角流「理想のドクター像」を、院長自ら熱く語ります。

両角和人
1972年 福島県福島市に生まれる。1998年、福島県立医科大学産婦人科学講座入局。2004年から2年半ハワイ大学の柳町隆造教授のもとに留学し、顕微授精に関する研究を行う。2005年、福島県立医科大学医学部大学院卒業。2012年に銀座に両角レディースクリニックを開業する。

父が進路に反対

医師になろうと思ったのは高校のベストフレンドの影響でした。

親友の鈴木君が毎日、毎日「医者になりたい」と話していたのです。私は最初、文系を目指していたのですが、だんだん医師になりたいと刷り込まれました(笑)。

その一方で、私の父は、私に会計士になってほしいと考えていました。

父としては一生かけてやってきたことを、子どもにもやってほしいという思いがあったんですね。医師をしている友人に「医者は、本当にやりがいのある職業なのかな?」と相談していました。父の中では大きな葛藤があったようです。

でも、最終的には応援してくれて、医学部に合格した時は本当に喜んでくれました。

そして、私の進路を図らずとも決定した鈴木君も、同じ福島県立医科大に入学し、今は耳鼻科の講師をしています。

強烈な衝撃

医学部4年生の後半から、臨床実習が始まります。1〜2週間ごとに小さなグループで様々な課を回るのですが、スタートは産婦人科でした。そこの講師が、なんとも強烈でした。

夜中に、子宮外妊娠をした患者さんが運び込まれてきたことがありました。出血してひどい状態だったところに、担当の医師が颯爽と現れたのです。

驚いたのは、今の私では当たり前のことですが、医師が目の前で死にそうだった人を適切に処置して、何事もなく帰宅したことでした。医師というのはこういうことができるのだと、非常に印象に残ったのです。

その次の日には、子宮がんの末期患者の方の手術に入ることになりました。学生の私は、医師の隣に立って経過を見ていました。この患者さんは、残念ながら、がんを全て摘出するには至りませんでした。

手術は中止することになったのです。すると、医師がこう言いました。

「ここを見て、がんが残っているだろう」と。「これは摘出不可能だ」と医師は悔しそうに漏らしたのです。

その後、患者さんの夫と子どもにお会いして、申し訳ないけれどがんが取りきれない状況だとお話ししました。家族はその話を泣きながら聞いていました。

私はそれを見て、ただ驚き、圧倒されていました。これも医師という職業の一部なのだと、強烈な印象を受けたのです。

生命の神秘を目撃

驚きは、まだ続きます。翌週には、生殖医療のチームに配属されました。産婦人科で不妊治療をするのは、今は当たり前ですが、私が学生だった1990年代は、産婦人科で体外受精や顕微授精は、ほとんどやっていませんでした。

私が在籍した福島医大は1994年、日本で初めて顕微授精を取り入れ、子どもが誕生した病院です。全国から、福島医大に多くの医師が視察に来ていました。

私が実習で回ったのが1995年。まさに、顕微授精の最先端を目の前で見ることができました。顕微鏡で、精子と卵子が受精する瞬間を見させてもらったのです。

「これはすごい!」と感動しました。今では培養師がやっている部分ですが、当時は医師がやっていたのです。これらの強烈な衝撃をいくつも体験し、産婦人科の医師になろうと決めました。

「入魂」を教えたメンター

様々な医師との出会いがあって、今の自分が作られているのですが、医療の現場で尊敬しているのは、木場公園クリニックの吉田淳院長先生です。

これがまた強烈な先生です(笑)

男性不妊について学びたくて、半年ほど勉強をさせてもらいました。驚いたのは、吉田先生が魂を込めて診療をする姿です。

受精卵を子宮に移植する時に、シリンジを使って子宮に押し込むのですが、押し込んだ際に親指に残る「シリンジ痕」をよく見せてきました。

「わかるか、これ。ここに魂がこもっているんだ!」と。わざわざ見せなくても、とも思いましたが(笑)

ここで吉田先生が伝えたかったのは、移植は技術だけでなく、心を込めてやるものだということでした。

医師は科学者であると同時に、患者に寄り添って魂を込めて移植をするべきだということを、吉田先生から学んだのです。

それまでは、科学的な論拠以外は信じず、「気合い」などは関係ないと思っていました。しかし今では、移植の後に心の中で、「うまくいきますように」とお祈りをしています。

科学的な根拠はありませんが、ここは神頼みというか、気持ちをちゃんと「入魂」することが大切だと感じるのです。

*次回の中編は、生殖分野の世界的権威から学んだ一言についてお伝えします。

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