セミナーレポート

産婦人科医と一緒に考える、私らしいライフプラン 

女性活躍を推進する大手総合商社の豊田通商と、グレイスバンクの提携クリニックの一つ、生殖医療に携わる名古屋の不妊治療専門クリニック・まるたARTクリニックは7月12日、「プレコンセプションケア」をテーマとしたセミナーを共同開催しました。

プレコンセプションケアとは、将来の妊娠を見据えて女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うことを指します。

今回はセミナーに参加した「まるたARTクリニック」の丸田英院長と、お笑いコンビ「フォーリンラブ」のバービーさんのパネルディスカッションについてお伝えします。

プレコンセプションケアがどれだけ重要なものなのか、将来の妊娠を考える上で知っておくべきことは何なのか、バービーさんが丸田院長に率直な疑問をぶつけました。

テーマ①プレコンセプションケアって?

バービー:私はプレコンセプションケアという言葉を初めて聞きました。日本語でこれどういう意味なんでしょう。

丸田:妊娠前の体のケアということです。妊娠前の女性やカップルが健康になるための選択肢を持っておこうというものです。

バービー:いつくらいからケアを始めるべきなんでしょう?

丸田:本当は月経が始まってからくらいが望ましいですね。10代、そして20代前半からそういう気持ちを持って過ごしてほしいです。

バービー:10代の時に産婦人科に行って、何を話したらいいのでしょう?

丸田:月経始まった頃というのは体の状態が不安定です。それが月経からきているのか、それとも疾患なのかという見極めが大事でもあります。そういった体の変化を相談してもらうことが必要です。

バービー:いろんな体のことを知る必要があるってことですね!

テーマ②産婦人科にみんな行ってる?

バービー:どれくらいの人が産婦人科に行っているのでしょうか。データでは見れるのでしょうか?

丸田:ここは産婦人科医として努力がまだ足りていないと思うところなんですが、「定期的に健診をしてない人」は70%、「全く健診を受けてない人」は30%です。

まず、産婦人科を受診したことがないというのに驚きました。

バービー:産婦人科というと敷居が高い空気感があるんですよね。

私も「産婦人科行きましょう!」というメッセージを伝えたくて、自身のYouTubeで番組を作ったんです。ただそこで、行って嫌な思いした人がいるということもわかりました。

親身になって話を聞いてくれる先生がいたかと思えば、そうでない先生もいると…丸田先生はいい先生だと思うんですが(笑)

丸田:話をしっかり聞いてくれる先生は確かにいい先生ですよね。

そういう産婦人科を探してもらって、1年に1度は健診に行くことをお勧めします。

例えば、性感染症にかかっていても症状がない場合もあります。女性も30代で100人に1人が閉経しているのです。男性も若くても無精子症ということもあります。

妊娠をしようとして、病院に行ったらびっくりということがあるので、自分の体のことを知る検査をしてほしいのです。また産婦人科ではAMH検査(卵巣予備能検査)をしてもらいたいと思います。

AMH検査とは:血液中のAMHの濃度を測ることで、発育過程の卵胞の数(量)を推測する検査。卵子がどの程度残っているかを推測する指標として用います

丸田:当院では、AMH検査の結果は40〜50分で出ます。その結果をどう読むのか、どう考えたらいいのか考えることに意味があります。

バービー:さっくり検査だけ受けたいという人もクリニックに行けますか?

丸田:はい、そういう人も増えてきています。

テーマ③妊孕性とライフプラン

丸田:日本は体外受精を始める年齢が遅いんですね。

40歳で初めて体外受精するとやはり遅い。ただ、バリバリ働いている時に妊娠しようと思うのを忘れてしまう雰囲気があると思います。

AMH検査を受けると、「本当にこれでいいのか」ということを立ち止まって考えるポイントになると思っています。

AMH検査であと2年しか排卵しないということがわかった場合、やはりどうなるのか考えますよね。もしここで選択肢がなければ、そもそもAMHの値を測る意味はないのですが、そこには卵子凍結という手段があります。

卵子を今の段階で採っておいて使うこともあるし、使わないで妊娠すればそれはそれでいい。ただ今から、将来への選択肢を持つことが大切なんですね。

写真: iStock/BrianAJackson

バービー:卵子凍結ってお金はどれくらいかかるんでしょう?

丸田:卵子凍結には保険が効かないので、クリニックによって違うのですが約20〜50万円かかると見ていただければと思います。

バービー:最近は、卵子凍結ができる会社・クリニックが増えたと思います。

私が(33歳だった時に)卵子凍結をした時は選択肢がなくて…

丸田:よく言われるのは、「どうしてクリニックで卵子保存しないの」かといういうことです。不妊治療の過程で受精卵は作るのに、どうして卵子凍結をしないのかということですね。

不妊治療は「今、妊娠したい」ということで、妊娠への希望の期間が短いものです。翻って、卵子凍結は30〜40代で行い、その後10年〜20年先に使うというプランです。

そうなるとクリニック、医師が生きてるという補償がないということもあります。時間の経過が長いので、安全なところで長期保存できるかということが大切になります。

バービー:どれくらい採卵すると、子供が1人できそうかという目安はあるんでしょうか?

丸田:あります。1個卵子を採っても難しいんですね。データ見ると、28歳で20個凍結したらどれくらいの確率で妊娠できるかというのを見ると、94%が1人を妊娠できるという結果に。

これを42歳の人で妊娠確率を上げようとしたら、単純計算で60〜70個の卵子が必要になるのです。

バービー:これって、どれくらい大変なことなんでしょう。

丸田:これはとても大変なことなんです。

女性は年齢によって卵も採りにくくなるので、28歳と42歳で60個を採る大変さは違うわけです。労力、時間、体への負担も大変になることを知ってもらいたいです。

バービー:採卵の個数も、個人差があるのですよね。

丸田:そうですね。若くても1〜2個の人もいるし、卵巣が元気な人で40歳であっても20個採れる人もいる。

AMH検査でどれくらい卵巣が元気で、どれくらい治療ができるかというのがわかるんです。

バービー:まずAMH検査をして、どれくらい卵子があるのかを知った上でどうするかということですね。

また、男性も精子の数が多いのか少ないのか、元気なのかという要素も妊娠には関わってきますね。男性もAMH検査のようなものを受けた方がいいのでしょうか?

丸田:男性は精液検査ができます。プレコンセプションケアは、卵子がどれくらい残っているのか、また精子があるのかを含めて考えるものです。

バービー:巷には携帯電話のカメラを使って、精子の運動率がわかるという検査もありますね。パートナーと検査をして、精子が元気だねって話したりしました。

丸田:それはクリニックとは全然違う測定なんですね。精液検査は精液全体を見て精子がどれだけいるのかを評価するんです。一部だけを見てもあまり意味ないのです。

しっかり検査をするのであれば、精液検査として受けてもらいたいと思っています。

バービー:女性には男性のパートナーに、検査をしてって働きかけるのが難しい人もいますね。

丸田:不妊治療になると女性の体の方が大変です。その前の検査では、男性は簡単に調べることができます。まずは男性に受けてもらう、その意識改革から始めてもらいたいです。

バービー:実際に卵子凍結をするとなると、通院が難しいのではないでしょうか?

丸田:当院では3回くらいの診察で採卵ということもできます。働いている人を応援したいので、仕事終わってからも診察をしています。

バービー:先生、寝てますか(笑)

丸田:よく言われるんですが、朝7時から採卵準備をして夜の12時くらいまで外来を診ています。

そうしないと、女性は仕事と卵子凍結の両立はできないでしょう。仕事を休まなくてもいいシステムを作っています。

バービー:卵子凍結は助成されないんでしょうか?

丸田:東京都は23年度で助成金がおりるとあって、卵子凍結が広まったんですが、名古屋はまだ100%自己負担になっています。

ここで企業の方にお話したいのは、卵子凍結と両立して働くのは大切なことだということです。アメリカでは企業が助成金を出して、将来への準備を手伝っているというところも多い。

日本はなかなかそういう事例がなくて、女性が仕事と両立して妊活しなさいよと言われている状況です。

そこで、40歳くらいまで両立ができないよねという悲しい現実があると思っています。

写真: iStock/Kanizphoto

バービー:少子化だと言っても、これでは無茶苦茶だよとなっちゃいますね。

私も伝えたいなと思うのは、卵子凍結は魔法ではないということ。年齢によって凍結卵子の妊娠率も下がります。でも、やってよかったと思っているんです。

昔は仕事に集中すべきなのか、今すぐ何か行動起こした方がいいのかと思って、結局何も行動できない時があったんです。そこで卵子凍結をして心がすっきりしました。

仕事に打ち込むことができたというのは良かったと思っています。

丸田:卵子凍結したらOKというのではない、その点を認識するのが大切ですね。

卵子凍結は保険みたいだけれど有効かどうかは、将来に出会う男性、またどこで治療するのかにも関わります。

だから100%を約束するものではないということも知ってもらって、選んでいただけたらと思います。

バービー:調べるといろいろとわかってくると思うので、選択肢を増やして最後は自分で決定してもらえたらと思います。私も将来に向けて頑張ります!

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