卵子凍結について

【動画付き】10分でわかる卵子凍結

こんにちは。
Grace Bank事務局です。

大手ITベンチャーのメルカリが福利厚生に卵子凍結補助を試験導入するなど、最近耳にする機会の多い「卵子凍結」。

そもそもどのようなプロセスで行うのかなど、実はよく知らないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、「10分でわかる卵子凍結」と称し、卵子凍結の基本について説明させていただきます!

①  世界一の不妊大国日本

みなさんは、日本が「世界一の不妊治療大国」であることをご存じですか?
2021年には国内の出生数が80万人を割ると言われている中、日本の体外受精件数は、年間約45万件にも上ります。

世界第2位の体外受精件数のアメリカでさえ年間28万件。
アメリカの出生数を鑑みて20~30代の女性人口に換算すると、日本は米国の約6倍もの体外受精を行っているのです。
日本の体外受精件数がいかに多いかお分かりいただけるかと思います。

体外受精というのは、不妊治療の中でもタイミング法・人工授精を経て最終手段としてたどり着く治療法ですから、不妊に苦しんでいる方がどれほど多いか想像に難くありません。

将来の妊娠を望む(女性の)誰しもが、「将来の不妊」が他人事ではないのです。

調査によると、お子さんのいない夫婦の約28%に不妊治療の経験があり、現在では出生児のうち16~17人に1人は体外受精による誕生となっています。クラスの2~3人は体外受精から誕生していることになるんですね。

これだけ不妊治療が広く行われていることもあり、日本の不妊治療の医療技術は世界一とも言われています。
一方で、件数・技術ともに世界一でありながら日本の不妊治療の成績があまり良くないことはほとんど知られていません。

2017年、アメリカでは年間約28万件の体外受精から7万8千人の子どもが誕生しました。これは約27%の成功率です。
一方日本では、約45万件の体外受精に対し、誕生した子どもは5万6千人。成功率はおよそ12%にすぎません。

体外受精では、体外で受精させるために女性の体から一度卵子を取り出します。
これを「採卵」と呼びますが、日本は採卵当たりの誕生数で言えば世界第60位です。世界一の件数・技術の国とは思えない成績です。

② 出産と年齢のはなし

皆さんは「不妊治療離婚」や「不妊治療離職」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
そんな現象が生まれるほど、不妊治療に費やされる時間・費用・精神的負担はとても大きく、年間45万件の体外受精が行われるほど多くの方が不妊治療に苦しんでいます。

ではなぜ、日本はこれほど不妊治療の成績が低いのでしょうか。
もちろん要因は1つではありませんが、そのヒントは「年齢」にあります。

日本では、体外受精を行う女性の平均年齢は40歳の一方、アメリカの平均年齢は34歳です。
さらにアメリカでは、35歳を超えて体外受精を行う場合、若い卵子のドナーを受けて実施することが一般的とされています。

日本では、他の先進国と比べて性教育が整備されていないためにそもそも性や妊孕性に関するリテラシーが低い状況です。
「現代では高齢でも普通に妊娠・出産できる」という誤解から、高齢になって不妊が顕在化してから初めてクリニックを訪れ不妊治療に苦しむケースが非常に多いのです。

ここで注目したいのが「卵子の年齢」です。

このグラフは、アメリカの政府機関であるCDDC(疫病予防センター)が発表しているものです。

下に年齢の目盛りがあり、ピンク色で示されているのが「自身の卵子で体外受精をした場合の出生率の推移」です。
こちらは年齢とともに低下していくのはご想像いただけるかと思います。

一方、緑色で示されているのは「平均28歳の若い卵子のドナーを受けて体外受精をした場合の出生率の推移」です。
驚くべきことに、ほぼ横ばいとなっているのがわかります。

年齢が上がるにつれ、流産のリスクが高まることも指摘されますが、このグラフが「妊娠率」でなく「出産率」なのも注目のポイントです。

もちろん不妊の原因は卵子だけではなく様々ありますが、卵子が若いだけでここまで妊娠・出産の可能性が維持できるということです。

あまり知られていませんが、そもそも卵子というのは特殊な細胞です。皮膚や臓器など人間の一般的な細胞が日々細胞分裂を繰り返して生まれ変わるのに対し卵細胞は「分裂して新しく生まれる」ということがありません。

そのため、女性本人と一緒に卵子も年齢を重ねます。そしてその加齢は、卵子の妊娠能力に直結するのです。

こちらの表をご覧ください。

これは、その個数の卵子が採卵できていた場合にどれくらいの確率で1人の子供を授かることができるかを表したアメリカの研究結果です。同じ個数の卵子であっても、30代後半から急激に妊娠能力が低下していくのがわかります。

さらに、卵子は新しく生まれないので女性の体内にある卵子の個数も減少し続けます。

女性は母親の胎内にいるときには約500万個の卵細胞を持っているとされていますが、誕生時には100万個、思春期の月経開始時には10万個にまで減ります。
そして毎月のセレクションを経て、一生に排卵できる個数は約400個とされています。

こちらのグラフをご覧ください。

これは国内のクリニックが発表している年齢と採卵個数の相関データです。
体外受精や卵子凍結に伴う採卵では採卵誘発剤などを使って複数個の卵子の採取を目指すことが一般的になっていますが、体内の卵子の減少とともに、月経1周期で採取できる卵子の個数も少なくなっていきます。

つまり、若い頃は卵子1個当たりの妊娠能力も高く体内にもたくさんの卵子が残されているのに、その妊娠能力も個数も加齢とともに低下していくのです。

③ 卵子凍結とは

「卵子凍結」とは、このような事実を踏まえ、若いうちに体外受精の前倒しとして卵子を採取し凍結保存しておくことを言います。
上記画像の通り、内容は体外受精の初期プロセスとほぼ変わりません。

大きな違いは、体外受精はパートナーがいることが前提になっているために受精後に胚の状態まで培養してから凍結する「胚凍結」であることが多いのですが、一般的に「卵子凍結」と呼ばれるものの多くは「未受精卵の凍結」を指しています。

技術的には、あくまで医療行為となりますのでどこまでいってもリスクが0になることがありません。

ただし、(日本は)年間45万件の体外受精を行っている不妊治療大国ですから技術的にはある程度「確立されている」といえるレベルにまで達しています。

さらに、近年この領域は技術的な進化も目覚ましいものがあります。
針が細くなったり採卵時に針を刺す方法が変わったり等女性の体へのダメージ(侵襲性)が低下してきています。
日本人研究者が開発した凍結・融解技術の進化で、クリニックによっては卵子の生存率が99%以上であることをこうひょうするなど、「ライフプランの選択肢」と呼べるまでになっています。

さらに、2012年にはアメリカの生殖医療学会により、「凍結・融解プロセスを経た卵子であっても遺伝的なリスクはない」との見解を発表しました。

④ 企業・著名人に広まる卵子凍結

これらの動きを受け、アメリカでは2014年のFacebookを皮切りに多くの企業が優秀な社員への福利厚生として卵子凍結保存の支援制度導入を進めています。

2021年現在では、従業員数2万人以上の企業のうち約17%の企業が卵子凍結を福利厚生制度として導入しています。
さらに調査によれば、アメリカの成人女性の約68%が卵子凍結の福利厚生が転職の際の企業選びにも影響すると述べるなど、注目の福利厚生となっています。

これらの影響から、アメリカでの卵子凍結件数は2014年から4年間で倍にまで増加。

今では多くのセレブリティが卵子凍結していることを公言しているのです。

まとめ

今回は卵子凍結・体外受精についての現状やプロセスについて説明させていただきました。

卵子凍結に関して注意しておくべきことは以下になります。

・卵子凍結は医療行為であるので、その性質としてリスクが0になることはない
・Grace Bankの登場などで卵子凍結費用は安くなってきたが、とはいえ一定の費用を要する

お身体に関しての大事な選択。ご自身でよく調べ、ご判断いただければと思います。

【動画バージョンはこちら!】

Grace Bankが目指す、女性の医学的機能にみんなで向き合い、配慮し合う社会

将来の妊娠・出産を考える女性に「選択的卵子凍結・保存サービス」を提供するGrace Bankでは、女性の医学的機能を理解し、向き合う社会の実現を目指して、今後もセミナーを開催していきます。ご興味のある方は是非ご参加ください。

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